記事によると

京都大学が、留年に悩む学生向けにWebサイトで公表しているメッセージがネットで注目を集めている

・留年の悪循環から脱出するための工夫や、留年や中退は「破滅」ではないことなどを語りかける内容

・京大全体の留年率は、ほかの大学と同等の約2割だとして、「現在の日本の社会において大学というシステムは、一定数の留年や退学を生み出すようにできている」と説明している

・「留年したら終わりだ」「中退したら破滅だ」など悲壮な思いを持っている人には、「冷静になってほしい」と諭している







 もしあなたが「留年したら終わりだ」とか「中退したら破滅だ」とか、悲壮な思いで考えているとしたら、冷静になって欲しいと思います。全国平均で、大学を中退する人は入学生の1割ぐらいいます。つまり、毎年、おおよそ5万人の大学中退者が生み出されているのです。留年する人も2割ほどいます。それだけの数の人が、中退、留年という学歴をもっているのです。厚生労働省の「21世紀成年者縦断調査(2012年調査)」によれば、在学中の者を除く 20 歳代の若者の10 人に1人は中退者(高校・短大・専門学校などの退学者も含む)だということです。
 児美川孝一郎(2013)によれば、高校入学者が100人いるとしたら、そこからの経歴において、留年歴も中退歴もなく就職して3年以上勤めている人は、41人に過ぎません。残りの59人のうち、6人は大学院進学者ですが、53人はどこかで留年、中退、ないし退職しているのです。ストレートな経歴で就職した会社に3年以上勤めているという人は、100人のうち半分もいないのです。
 留年中の人は、中退してしまったら就活で不利になると恐れている人もいるかもしれません。たしかに、企業の採用方針の狭量さゆえに、現在のところそういう現実があることは残念ながら否定できません。調査では、大学中退者は、全体として非正規雇用就労者の割合が高いということが示されています。調査からは他にもさまざまな面で大学中退者の困難な就労状況が読み取れます。詳しくは「大学等中退者の就労と意識に関する研究」(独立行政法人 労働政策研究・研修機構、2015)を参照してみてください。こうした現実を客観的に知ることは、進路を決める上で大切なことです。
 しかし、そうした不条理な現状を踏まえた上で、だからといって中退したら人生が終わりだとか、破滅だとかいうわけでは決してないということにも目を向ける必要があります。上に挙げた調査でも、大学中退者が全員失業しているとか、誰も正社員になれないとかいう結果が出ているわけではないのです。あのスティーブ・ジョブズも、ビル・ゲイツも大学を中退しています。Facebookを立ち上げたマーク・ザッカーバーグ、ソフトバンクの孫正義もそうです。タモリ、秋元康、堺雅人などなど、大学を中退して社会で活躍している人はたくさんいます。こうした著名人に限らず、当たり前に普通に働いてこの社会を支えている大学中退者はいくらでもいるのです。留年経験者なら、なおのこと、たくさんいます。

 京都大学は難関校です。当然のことながら周囲の人たちは退学を勧めないでしょう。何とか頑張って、何年かかっても卒業するよう勧めることが多いでしょう。たぶん、あなた自身もそう考えることが多いでしょう。本当に卒業したいのであれば、それは当然のことであり、有意義なことです。
 でも、正直に言えば大学生活に意味を感じられず、退学したいし、その方がいいんじゃないかと思っているけれども、退学したら「人生破滅」だという恐怖のイメージから、やはり退学はできないという考えに傾いている人もいるかもしれません。自分には合っていない、やめたい、という心の声がしても、いったん始めたことを途中でやめるのは意気地なしだとか負け犬だとかいう考えのために、その心の声に耳をふさいでいる人もいるかもしれません。期待してくれている親やお世話になってきた先生に申し訳ないという思いから、どうしても退学は口にできないと考えている人もいるかもしれません。
 続けるという選択を支えている根拠の大きな部分が、やめられないという理由にあるのなら、一度、やめるという選択肢を落ち着いて現実的に考えてみてはどうでしょうか。大学をやめてできることを考えてみましょう。胸の奥やお腹の底から聞こえてくる心の声にじっくり耳を傾けてみましょう。そういう作業を十分に経た上で、やっぱり続けるという選択になる場合もあるでしょう。その場合でも、やめるという選択肢を検討することは無駄ではないはずです。やめるという選択肢を十分に検討することで、続けるという選択は、より積極的で能動的なものになることでしょう。
 みなさんの人生の時間は有限であり、貴重なものです。みなさんが有意義な決断をされることを願います。日本の社会の現状において、こうした判断は誰にとっても難しいものです。人生の岐路において、絶対に失敗のない完璧な決断などありえません。迷って当たり前、たじろいで当たり前です。必要ならば一緒に考えていきましょう。それとともに、大学における進路変更がより自由に安心してできるような社会をみんなで実現していきたいものです。




この記事への反応


・俺の大学の寮、留年製造機的な事になってたけど、毎年3月4月くらいに掲示して欲しい名文

中退したら破滅したよ。中退イコール破滅ではないけど、取り返しのつかない破滅というのは確かにあるから覚悟しておいたほうがいいよ

留年って思ったよりも結構いるんだ。浪人も合わせたら相当な割合になりそう。

こういう話は大学にいた頃聞きたかったorz

これなぁ… 得体のしれない逸脱に対する恐怖感がどれくらいの人を不幸にするのかみたいなの、あるよなぁ。

さすがに留年が決定時点ではしばらくへこみましたが。確かに破滅ではない

とても読みやすくて親切、いい文章。留年しただけで奨学金切るJASSOはマジで死んでくれ。留年→貧困→留年の負のスパイラルが止まんねえ。

電通にもこんくらいの優しさが欲しい

一度レールから外れる怖さは尋常じゃないけど、レールだけの人生っていうのもつまらないよね。

Fランの人達は勘違いしちゃだめだよ















大学で必要な勉強したらさっさと退学して働く人もいるしなぁ

失敗したら再スタートが難しい日本社会が悪い(´・ω・`)




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