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この世には、エリクサーを躊躇なく使える人間と、使えない人間がいるんだ。

僕は彼女の不幸な顔しか知らない 僕は彼女の不幸な顔しか知らない。    「遅れてごめん」  彼女は息を弾ませてそう言いつつ、カップを片手に向かいの席に座った。 「そこまで待ってないよ」 僕の言葉はカフェの喧騒に…

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記事より、一部だけ抜粋


健太郎君は中学生の時の友達で、僕の親友とも呼べる存在だった。

クラスで浮きがちだった僕と健太郎君はいつもゲームの話をしていたような気がする。確かその時はスーパーファミコンで発売されていたファイナルファンタジーIIIに夢中だった。

(略)

一心不乱にプレイをする健太郎君にそれを見守る僕、すると健太郎君がふいに切り出した。


「俺さ、来年になったらまた引っ越すんだ」

彼の言葉に僕はどう答えていいのか分からず、適当に返事をした。

「へえ、またお父さんの都合か何か?」

彼は首を横に振った。

健太郎君はその理由をこう説明した。なんでも、ある特殊な職業につくための学校に行くことを決意したというのだ。

(略)

決断の男は淡々とファイナルファンタジーを進めていく。ちょうど強い中ボスと対戦する場面にさしかかった。僕も苦戦したので良く知っている敵だ。

「こいつ強いぞ、落ち着いていけ」

そうアドバイスする。けれども、この中ボスをクリアしていた僕には何となく分かっていた。たぶん現在の彼のレベルではこいつを倒すことはできない。本来ならもうちょっとレベルを上げてから挑むべき敵なのだ。

「くっ、こいつ強い……!」


案の定、健太郎君は苦戦していた。みるみるとHPは減っていき、様々な魔法を繰り出すが次第にMPも枯渇していき何もできない状態に陥っていた。

ただ全滅を待つのみである。いよいよ絶体絶命となった時、彼はこう言った。



「まだいける!」

そう叫ぶとアイテムボックスを開き、あるアイテムを使うことを選択した。それは「エリクサー」と呼ばれるアイテムだった。

「ちょっと待て、貴様正気か!」

(略)


「装備を整えて出直せばエリクサーを使わなくても倒せた。使うべきではなかった」

僕の主張に彼は反論した。

「その性能から言ってエリクサーはピンチを脱するために作られたアイテムだ。それをピンチで使わないのはおかしい」

「俺だってエリクサーがポンポン手に入るなら使っていく。ただ、いつ手に入るか分からないものを気軽に使うべきではない。使うべき時がくるまでとっておくべきだ」

「それでもピンチなら使う」

「じゃあ雑魚敵が相手でもピンチになったら使うのか」

「使う」



と完全に平行線で喧嘩みたいになってしまった。

最終的には「このエリクサー野郎!」「この保存野郎!」みたいな意味不明の罵り合いを経た後、喧嘩別れすることになった。

世界広しといえどもエリクサーで親友を失ったのは僕だけではないだろうか。


去り際に、健太郎君が僕の背中に叩きつけた言葉が妙に印象的だった。

「お前はきっと永遠にエリクサーを使えない」



それからしばらく経って、僕は喧嘩の原因となったファイナルファンタジー3をクリアした。

結局、最後までエリクサーを使うことはなかった。



あれだけ貴重だと思われたエリクサーも物語が進行して終盤になるに連れて結構な頻度で手に入るようになっていた。

僕のアイテムボックスにはエリクサーが溢れていた。じゃあ、バンバン使えばいいじゃん、と思うかもしれないが、そもそも終盤になるとそんなにピンチに陥ることもなく、さすがにラスボスで使うだろうと思ったけどそこまで追い込まれることもなく、普通にクリアできてしまった。

結局、「その時」は来なかったのだ。


僕は激しい自己嫌悪に陥った。

確かに僕はエリクサーを使わなかった。いや、使えなかったのだ。健太郎君が言った通りだったのだ。


以下略



この話題への反応


はい、FF3に限らずエリクサーを1個たりとも使わなかったのは私です。

最近エリクサーを使える人と出会って、僕も使うべきか葛藤したけど作者と同じ結論を出したからすごい身に染みた。物語の結末も同じになるかはわからないけど。

あー、私は割と使えないで終わるわ…保守的なのかなぁ…?

エリクサーを躊躇なく使える人間とそうでない人間を分けるのは、先天的なものではなく、もっとどうでもいいもの、例えばただの「きずぐすり」を使うときに、ちゃんと考えて決断したか、惰性で使っちゃったか、の違いの積み重ねだと思う。

面白い記事。
私はエリクサーを躊躇なく使う派。
旦那は絶対使わない派。


エリクサーを付ける人間にも二通りあって、「先に進むための決断として使う」人と「目の前の困難を回避するためだけに使う人」がいる

自分的に数少ない決断が出来た時は、人生のゴールが明確になったから。そこに向かってるんだからこれでダメでも後悔しないでしょって思えた。でもできる事ならしたく無いとは思う。一か八かの要素もあるので。

この判断が嫌で、そもそも冒険に出かけない派の俺。しょっぱい話です。

私はエリクサーなかなか使えない方だなぁ。まったく使えなくはないけど、雑魚には使えない。

見慣れた単語がトレンドにあったから見てみたらすごく興味深い内容だった。私はエリクサーを使わない人間だけど使ったとして上手くいくとは限らないって思うと使えない。最悪の結果を予想しているから。










エリクサー使えないほうの人間だけど
これはなかなか考えさせられるね・・・