PCゲーム業界はいかに割れ厨に勝利したか Steamの”5つの戦略”
http://arcadia11.hatenablog.com/entry/2018/03/07/070000
300x225


記事によると
・酷い話である。

私はマンガの業界事情について大して知り得てないのだが、何故ここまで無法地帯になってしまったのか、怒りを通り越して頭痛がする。

ともあれ、こうした「割れ」問題はゲーム業界においても無縁ではない。というか、10~20年以上前は割れ厨こそPCゲーム業界を滅ぼすとさえ言われていた。



例えば、2012年にはUBIsoftのCEOが「PCゲームの93%以上が海賊版でやってられない」*1と発言して物議を醸した程に業界は逼迫しており、据置型とのマルチ展開(多くのPCゲーマーはマルチ展開には批判的だった)や、F2P化、モバイルアプリ展開などが流行しPCゲーム業界は急速に衰えていった。

あれから5~10年。PCゲーム業界は”健在だ”。2016年にSteamのユーザー数が1億2500万人を突破した上に、米国におけるビデオゲームの売上を更新した『GTA5』のPC版は1000万本に到達しかかっている。他にもオンラインタイトルは競技シーンとしての価値を含めて大きく躍進しているし、PCゲームに強い配信サイトTwitchでは日に1500万のアクティブユーザーが押し寄せている。*2

依然として割れが跋扈するPCゲーム業界だが、いかにして、PCゲームは割れという脅威と戦ってきたのか。ここではSteamという「プラットフォーム」の導入とその戦略について解説したい。



「Steam」とは、主にゲームのダウンロード販売、デジタル著作権管理、ユーザーの交流補助を目的とした、Valve社が運営するゲーミングプラットフォームだ。2016年時点で1億5000万人のユーザーが利用し、25カ国でローカライズされている。

デジタル著作権管理とあるように、元よりSteamは海賊版への対策として作られている*3。Valveが1998年に発売したFPS『Half-Life』は累計930万本売れたが、そのMODである『Counter-Strike』の流行等もあり夥しい数が海賊版として流出したことへの反省が、ブロードバンドでゲーム全体の流通を管理するという、途方もない夢を結実させたのだ。

1.価格や場所を問わない自由な流通

まず原則として、漫画にせよゲームにせよ既存の流通網が存在する以上、ユーザーは新たなプラットフォームでコンテンツを買おうと思わない。

そこでValveが行ったのは極めてシンプルな方法を取った。規格外なセールだ。Valveではシーズン毎に定期的に大規模セールを行い、作品の売上に問わず25%~90%offまでの割引を行うことで、一躍ユーザーを増やすことに成功している。

加えて、Valveはブロードバンドによってどこでも素早くゲームが入手可能という環境を作ることで、地理的な障害無く誰でもゲームが遊べる環境を作った。


2.付加価値としての高い利便性


Steamは単に安くゲームを入手できるだけでなく、オンラインであることを活かした機能によってユーザーの快適なゲームプレイを支えている。

例えば自動のパッチ更新。過去では、ゲームにパッチを当ててアップデートする際には、公式サイトから直接パッチをダウンロードする事があったが、Steam上では全て自動でパッチ更新がされるし、Steamクラウドという機能と連動させれば、ゲームのセーブデータやユーザー設定をSteam上に自動保存してくれる(ゲームをアンインストールしても設定を維持できる)。

またSteamにはユーザー交流をアシストするSNSのような機能が充実しており、ゲームで出会ったプレイヤーと交流したり、グループを作って仲間を集めたり、フォーラムで意見交換するといった事も出来る。


3.運営の誠実な態度


Steamがユーザーに受け入れられたのは、運営のValve社がしっかりとユーザーとコミュニケーションを取り、誠実な対応を見せてきた信頼がある。

初期でこそ「幻のBlack Box騒動」*5があったり、不具合の連発でゲームが遊べなかったり、無料で遊べたMODを製品化したりと、数々の批判をSteamは受けていた。

だがその都度、その理由を釈明し、今後の運営に活かす度量もValveは持ち合わせていた。常にSteam上にはフォーラムが存在していて、そこに届いたユーザーの要望を運営に反映させている。


4.ユーザーの意識変化


Steamというシステムが受け入れられた前提として、ユーザー側もまた海賊版を許すべきではないという意識が根付いていたことが考えられる。


5.インディーズ文化へのサポート


そしてSteamを語る上で外せないのが、インディーズ文化への手厚いサポートである。

「1.」で述べたように、Steamは既存の流通と異なり、場所や価格を選ばず自由に展開できる強みがあり、これによりパブリッシャ(出版会社)を持たずとも、個人でゲームを制作し販売まで出来る時代が到来した。

これにより、個人~数人規模の小規模な企業でも独自のゲームを公開することが可能になり、更に「2.」で述べたように、ユーザー間での交流もSteamでは盛んだったので、『World of Goo』や『Braid』を始めとしたインディーズゲームが人気を博し、インディーズゲーム文化が大きく進歩した。

元々、Steamを開発したValve社がゲーム企業だったこともあり、インディーズに限らずゲーム企業へのサポートは手厚い。過去にはSteamが小規模メーカーを搾取するという意見があったが、元インディーズであるTripwire Interactiveは「Steamは極めて良心的なロイヤリティーでサポートしてくれた」と擁護している。*8


PCゲーム業界はいかに割れ厨に勝利したか

結局のところ、割れ厨への最も有効な対策は冒頭で引用したGabe氏の言葉、「海賊版より良いサービスを提供する」ことに尽きると私は考える。

同社のJason氏は「海賊版が存在するのは正規版が届かないから」と言うように、そもそも、割れ対策をいくらしたところで、割れ厨は他の漫画に食いつくだけだし、その分売上が増えるとは限らない。割れ厨の擁護をするわけではないが、適正な価格で、適正なコンテンツを販売すれば、相対的に海賊版の脅威は減るのではないか。


私が普段利用する限りでも、今のマンガの流通が十分利便性があるとは感じない。電子版が普及したといえ、まだまだマンガ業界はこうしたプラットフォームの育成が十分ではないと思う。

とにかく、ふざけた盗人共を討伐するに必要な戦略は5つ。適正な価格で、多様な価値を付加し、業界側がユーザーに歩み寄り、ユーザーもまた意識を変え、クリエイターたちを育てること。

早急に必要なものは、海賊版への防衛と並行した、コンテンツをより効率よく提供するための土壌の育成だ。海賊版を撲滅できないなら、海賊より良いものを提供する。それが未来のコンテンツ業界に問われる課題だと私は思う。



(因みに、音楽業界・映像業界にはストリーミングサービス(サブスクリプションサービス)という成功例もあったり、オンラインゲームやeSportsもPCゲーム業界を盛り上げる大きな一因になっている、これらの事例を調べてみても面白く、またいずれ記事にしたい。)





この記事への反応



良記事

とにかく運営の対応が良い

iTunesと似たような戦略だな

たしかにSteamは革新的だと思う。大手のみならずインディーズが参入しやすいというのもある

α版の時からプレーできたり、アップデートが楽だったり、steamは本当良いサービスだと思う












まぁこれに限るよね。

便利で安価なモノがあれば自然と海賊版には手をださなくなる。








ファイナルファンタジーXV ロイヤルエディション
スクウェア・エニックス (2018-03-06)
売り上げランキング: 28